廃品利用ツールの一つとして振れ取り台を紹介します。主に産業用自動機のフレーム等に使用するアルミフレームの残材を使用しています。ベースのプレートやハブを固定する左右のプレートも機械部品の残材に追加工を施したものですからあちらこちらに不要な穴が幾つも明いていて、見た目に美しくはありません。私の生業は産業用機械の設計製作ですので、金額に糸目をつけなければ幾らでも高機能な振れ取り台は設計できますし製作も可能です。しかし私は自転車整備のプロではありませんし使用頻度も極わずかです。そこでなるべく費用を掛けずに端材や残材、既存のスケール等を使用しながらも精度は十分満たせるような振れ取り台をコンセプトに製作しました。
私がメンテするホイールのOLDは 100,120,126,130 の4種です。OLDが変わる都度フレームの付け替えが発生します。図1はOLD100の状態ですが、取付ベースの黄〇部分の取付穴が各OLD用の穴になっており、サイズに合わせ左右フレームの取付位置を変更します。振れ取り台の精度で大事になるのはベースに対しハブ軸が平行であること(図1)、ハブ軸にたいして左右の固定プレートが垂直であること(図2)です。
ハブ軸のベース面に対する平行は図3のように定盤の上でハイトゲージを使いハブ軸の左右の高さが等しくなるよう固定プレートの位置を調整します。(図3) この作業は最初の組立時にしておけば、その後のOLD変更にともなうフレームの付け替え作業では不要です。ベースの平面が出ているので取付位置の変更による高さの変化はありません。
ハブ軸と左右固定プレートとの垂直は図4の治具によっておこないます。φ10の公差寸法シャフトをハブ軸に見立て、OLDを決めるセットカラーを2個使用しています。調整を行うOLDの値にノギスを設定し2個のセットカラーの外側面間をOLD値に固定します。この治具を振れ取り台本体に取り付け、左右固定プレートをセットカラー外側面に押し当て密着した状態で左右フレームを固定することでハブ軸と固定プレートとの垂直を確保することができます。
仮にベースに対するハブ軸の平行やハブ軸に対する固定プレート(アルミフレーム含む)の垂直が出ていなかったとすると、極端な表現ですが図5のような状態になってしまうのではないかと推測します。私は自転車整備のプロではありませんのであくまでも一般産業機械に携わる技術屋の見解です。
実際の振れ取りは図6のように本体に縦振れ調整用と横振れ調整用のメタルスケールをセットしておこないます。スケールを直接リムに当てるとリムに傷がついてしまうので、隙間ゲージを用いそのクリアランスが全周均一になるよう調整していきます。横振れ用スケールのフレームからの突出量は図5で示したLの値から隙間ゲージの厚みを引いた値 (D-T)/2-0.3 となります。縦振れ用スケールはリムが最も突出した場所にセットしニップルを締める毎に上げていき、やはり隙間ゲージを用いて全周のクリアランスが0.3mmに近づくよう調整していきます。