薪ストーブというコンテンツ
私は信州北部(北信)に暮らしています。全国的に見れば寒冷地の部類に入るのだと思います。そのような環境のなか自宅の暖房器具は薪ストーブのみ、シーズン中はほぼ火を落とすことなく焚き続け早十数年になります。そこそこヘビーなユーザーではないかと個人的には思っていますが、そんな私の感じる薪ストーブの魅力や楽しみ方をここにまとめておこうと思います。私はこの先もまだ薪ストーブを使い続けますので、あくまでも薪ストーブライフの中間報告のようなものです。
私は薪ストーブを導入するにあたり、様々なユーザーさんのホームページやブログを拝見し多くの情報を得ることができました。それらの知識は導入時のみならず、その後の運用にあたってもたいへん役に立つものでした。私の記事がこれから薪ストーブの導入を考えている方やすでにユーザーである方の目に触れ、何かしら参考になる部分があればとても嬉しく思います。
薪ストーブの価値と魅力
これが適切な比喩なのか分かりませんが、薪ストーブとは高峰で見る御来光のようなものではないかと私は考えています。御来光は美しいですがその峰まで苦労して登り詰めてきた過程の存在が更にそれを美しく魅せてくれるのではないでしょうか。薪ストーブの有難さも同様でそれに伴う作業に多くの時間と労力を費やしてきたからこそ更に高まるものだと私は思っています。そうは言って薪ストーブに関わる作業がまるでそれを堪能するための試練のように捉えられてしまっては困ります。なぜならそれら作業のなかにこそ意外な楽しみが潜んでおり、それが薪ストーブの隠れた魅力でもあるからです。
話をまとめると薪ストーブはその機能そのものの価値にどどまらず、それに付帯する作業を含めた薪ストーブライフそのものが魅力、というのが私の見解です。以下に私の感じる価値と魅力について記載しておきます。
柔らかな暖かさを放つ暖房器具としての価値
輻射熱による鋳物製薪ストーブの暖かさはとても柔らかです。
灯油を燃やすストーブとファンヒーターを使用している工場から戻ってくると、その体感の違いを一層強く感じます。薪ストーブが放つ遠赤外線の波長が長いため、皮膚の痛点を刺激せず温点に届くからだという説を耳にしたことがあります。説の真偽は定かではありませんが、妙に納得させられてしうほどその体感は柔らかです。
屋内で焚火を堪能できるインテリアしての価値
人の遺伝子には原始からの記憶でも含まれているのでしょうか、薪が燃えている情景(焚火)がとても愛おしく感じられます。キャンプの夜など焚火を眺めながらの一杯は至福のひと時です。私は冬になると毎晩ストーブの前に陣取って灯りを落とし、美しい鋳物の装飾箱の中の焚火をみながら晩酌を楽しむのです。夜中に気づくとストーブの前で寝ていたなどということが幾度も起こりましたが、風邪をひいたことはありません。
特別な調理器具としての価値
私は中山間地の育ちで、子供の頃家の風呂は薪で沸かしていました。夏になると風呂釜の熾き火で祖父がよくトウモロコシを焼いてくれたのを懐かしく思い出します。あの味を求めて観光地を訪れた際などよく焼トウモロコシを食してみるのですが、祖父の焼いてくれたあの味に勝るものには出会えません。私も薪ストーブという調理器具で色々な焼き物を子供達に振舞ってきました。将来彼らにとってそれが祖父のトウモロコシのような良い思い出になってくれることを願っています。
隠れた魅力 その1
薪ストーブに関わる労働のなかには薪割りのようにスポーツと同感覚で楽しめるものがあります。薪割りには体力だけでなく技術が必要です。今の一撃は良かったのか、悪かったのか、狙った位置にもっと正確に斧を落とすにはどうすれば良いのか、常に上手く割る為の自問自答を繰り返します。このような上達の為のプロセスや体を動かした後の爽快感はスポーツと比較しても遜色ありませんし、難敵の欅などがスパッと割れた時の気分は格別です。
隠れた魅力 その2
人には向上心というものがあります。山で木を伐採し切り出す、それを玉切りにし、更に薪に割って乾燥させる。それを管理、運搬し薪をくべて暖を取る。この単純とも思える一連の作業ですが、全ての作業に改善と工夫の余地があります。その改善と工夫を繰り返すことで物事が良い状態になっていくというサイクルが私の向上心というある種の欲望を満たしてくれます。一例ですが運搬作業ではロープワークも重要です。荷崩れを起こさないためのロープワークをGoogle先生に教わったりして多方面の知識が身についていくのも嬉しいことです。
我が家の薪ストーブ
我が家のストーブはバーモントキャスティング レゾルートアクレイム。2004~2005年シーズンから使用しています。当時薪ストーブユーザーのバイブルとも呼べる「薪ストーブ大全」の表紙を飾っていた歴史あるストーブですが、今では廃番になってしまったようです。